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フリーデザイナーとして独立した私にとって、ポスターのコンクールに応募することは最高の勉強であり、日常の励みでもあります。なかでも観光ポスターコンクールは無名作家にとって絶好の登竜門で、私はこれに全力を集中しました。その最初の出会いは、昭和二十三年に旧国鉄門司鉄道管理局(門鉄)が公募した観光ポスターコンクールでした。 門鉄には観光宣伝担当の近藤重喜という方がおられ、後に私もいろいろな観光ポスターを依頼されるようになりましたが、国鉄西部支社観光課から小倉駅主席助役へ転出のさい「太陽と緑の国九州を行く」という観光案内書を出版されました。その本の扉に作家松本清張さんの描いた「九州へ」と題した観光ポスターが載りました。(写真参照) 若いころ朝日新聞西武本社広告部で図案の仕事をしておられた清張さんは戦時中から、私も会員だった九州図案家協会に参加されており、戦後日本観光協会主催の「全国観光ポスターコンクール」では天草をテーマにした作品で二等に入賞された実績もあります。 「九州へ」という作品は、昭和二十六年に描かれた作品で、このポスターの取材に鹿児島へ行かれたとき「芥川賞」の知らせがあったと聞いています。 強烈な南国の太陽を受けて生い茂るバナナの葉の下に牛に乗った乙女の姿があしらわれているもので、濃い緑の影と絣(かすり)の着物に赤い「けだし」の色が特に印象的でした。この作品について、当時の新聞に次のような私のコメントが掲載されています。 「松本清張さんの作品にはいつもストーリーがありました。この作品も、牛の向こうからだれかが出て来て、次の展開がありそうな画面です。作家になられても“点と線”“黒地の絵”というようなデザインらしい題名が多いのを見ると、やはり絵心が影響していると思います」あのころの審査は、門司だけでなく福岡で催されたこともあり、清張さんが「自分の作品は入賞しただろうか」と私あてに出された問い合わせの直筆のはがきを持っていますが、今では大変な貴重品になりました。 さる平成四年八月他界されて残念でなりません。 合唱 松本清張氏作のポスター(昭和26年作) (1993年 画家 著書より) |