第五十四回

  

 冷蔵庫ドア・デザイン募集は全国から約二万点の力作が寄せられ、岡本太郎先生ほか五人の審査員の厳選で、特選は〈花束〉(福岡市・西島伊三雄様)に決定と新聞一ページに大きく発表されました。「やったァ!」こんどは間違いなく私が一等賞です。しかも佳作にもう一点が入っています。

 週刊誌の記者がやってきて「東芝の会長(石坂泰三・万国博協会会長)がクレームをつけた万国博マークの腹いせに、ナショナルで屈辱をはらしたかった、とそういうわけにはまいりませんか」などと、言ってきたりしましたが「恨みで作品ができるものではない」と強く否定したことでした。それにしても、万国博マーク落選も、ナショナル特選もどちらも場所が大阪であり、私は関西で一躍有名になってしまったのです。

 ある日・・・。「もしもし、私は大阪の繊維会社の者ですが、先の万国博マークやナショナル冷蔵庫〈花束〉を見て、ああいう感じのデザインをシャツにプリントしたいので、近日中福岡へお願いにあがってよろしうおますか?」との電話です。

 「ハイハイ、用件は分かりましたが、私は三日後に上京しますので大阪駅ホームで五分間お会いしましょう」と約束しました。

 三日後・・・。

 特急「あさかぜ」が大阪から京都へ走る車内の向こうから、背広姿の紳士がひとりずつ客席に声をかけながらこっちへやって来ます。近づくにつれて「福岡の西島さん、いらっしゃいませんか」という声です。

 「アッ!私です。すんまっせん!」私は約束をスッカリ忘れていたのです。お詫びしながら京都に着くまでの間に話を聞き、当時はまだ布地に簡単にプリントができないころなので「これは面白い」と了解しました。

 私のデザインが、大都会の中でどういうふうに利用されてゆくのかは分かりませんでしたが、やがて、そのデザインがテイジンに採用され「コニーローザ」という名称で全国発売されました。


販売用全判ポスター

 今までは紙に印刷される平面ばかりの仕事が、冷蔵庫と共にこんどは立体的にプリントされて、しかもファッションモデルに着てもらうのですから、デザイナーみょうりに尽きますね。


プリントのシャツを拡げて

(1993年 画家 著書より)


  

 

   
  


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