第七十四回

  

 昭和五十三年の春、サンフランシスコの「さくら祭り」に「博多どんたく」を、との招請状が進藤福岡市長さんに来ているので、私にそのまとめをしてくれないかとのことです。

 「どんたく」が昭和のはじめ、台湾や韓国に行ったのは、知っていましたが、アメリカというのは初めてのことで、これはなんとか成功させたいと思いました。「どんたく」は昔から町人の心意気であり、市民が身銭を切って参加していただくことが第一です。知り合いの方々に呼びかけましたら、なんと百四人の方が賛同して下さいました。

 準備に手落ちがあってはなりません。まず「どんたく」の飾りの中心になるカサボコの垂れ布の製作です。進藤市長さんや、市民の祭り振興会の蟻川五二郎会長、永倉三郎九電社長(いずれも当時)に「書」をお願いし、私と帯谷瑛之介さんは絵を描き、門田敏郎氏と博多人形師の置鮎正弘さんに組み立てていただきました。

 一行は羽田からハワイ、アメリカ西海岸を旅行しながら、とても親しくなったところで、いよいよサンフランシスコ入りです。前夜、ホテルで各部屋をのぞきますと、ショッピングもやめて、皆さん熱心に衣装の点検や三味線、琵琶、鼓などの音合わせをされています。

 翌日午後一時、サンフランシスコ市庁舎前集合。名物のケーブルカーの廃車を利用した自動車に大太鼓やマイクを仕込み、総勢百四人の大部隊が整列しました。「さくら祭り」は私たち「博多どんたく」ばかりではありません。アメリカ組はミシシッピの川船に仕立てた船でバンジョーをかき鳴らし、中国は深紅の衣装をまとった少女歌舞団。日本からは東北の民謡隊や、着物ショー、歌手たちも参加です。

 私たちは、その十一番目に出発です。先頭に小学六年生の吉田ひとみさんが参加している筑前琵琶の嶺旭蝶さんの一行、次が松ばやしのカサボコ、その宰領役は長老の落石栄吉さん。続いて在留邦人やアメリカのお友達。博多民踊協会の実藤まつえさんの一行。真ん中の花自動車から♪ぼんち可愛ねんねしな…と音を流し、続いて「四季の会」の千々和美津子さんたち。最後に町人文化連盟の会員たちが三味線と鼓でチンチキチン、ポンポンと古風な音をまき散らしながら歩きました。


サンフランシスコ名物のケーブルカーを改装した「どんたく」のバス

(1993年 画家 著書より)


  

 

   
  


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